◇「ひとりひとりの子どもの能力はいっさい不明のまま過ごす教科」
1968年刊の「音楽教育の診断と体質改善」で、山本弘氏は述べている。
音楽科だけが、内容の系統性がなく、それに対する指導法もあいまいなことを表現した主張である。
◇私も、昔から不思議に思っていることがあった。
「高いきれいな声で歌える」というのは、大切な技能である。
それが、身についていない子が多いという事実である。
私自身、小学校を卒業しても、中学校を卒業しても、「高いきれいな声で歌う」ことはできないままでいた。
というより、私の周りの友人のほぼ全てが高いきれいな声で歌うことはできなかった。
◇私の周りだけの問題なのか?と思い、教師になってからも、いろいろな学校を見てきた。
学校によって、「高いきれいな声で歌う」ことができている子もいる。
学校によっては、「高いきれいな声で歌うことができない」。
これは何なのか?と不思議に思ってきた。
◇教師になってから,「歌い方」を学んだ。
歌い方を学ぶことで,私自身が歌えるようになった。
きれいな声で,いろいろな種類の声を出せるようになった。
知ってみれば,簡単だった。
そして,「歌い方」だけでなく,その「教え方」も学んだ。
知れば,「こんな簡単なことか」と思えることだった。
学級の子どもにも指導した。
ものの30分ほどの指導で,みんなよい声で歌えるようになった。
高学年に試してみた。すぐに歌えるようになった。
1年生に試してみた。やはりすぐに歌えるようになった。
◇ちなみに,私は,水泳の教え方を同じように学んでいる。
水泳を教えると,すぐに泳げるようになる。
上達の早い子で,30分というところである。
ものすごく水泳が苦手ならもう少し時間がかかるが,それでも泳がせることができる。
◇ここに,2つの事実がある。
「高学年になってもまったく泳げなかった子を、私は、30分で泳がせることができた。」
「きれいな声で歌えない子どもたちを、30分で歌わせることができた。」
この2つは指導技術である。
知れば、誰でもできる。
知ればとっても簡単な,教え方の技術である。
要は、知っているのか知っていないのか?の違いだけである。
知っている教師の力は100。知らない教師の力は0というだけである。
これは考えてみると恐ろしいことだ。
◇全国で、小学校を卒業しても、高いきれいな声で歌えない子が山ほどいる。
一方で、低学年でも高いきれいな声で歌わせることができる教師がいる。
違いは,「教え方」を知っているかどうかだ。
授業の技術を知っているかどうかだ。
本当にただそれだけのことなのである。
すごい教師というのは,存在しない。
ただ,技術を身につけている教師と,そうでない教師がいるだけである。
これは,新卒教師にとっては励みになることだ。
技術を知ってさえすれば,新卒教師であっても,子どもを伸ばせるのだから。
このあたりのことを,以下の書籍で詳しく解説している。
「大前流教師道―夢をもちつづけることで教師は成長する」
「勉強ができる! クラスのつくり方」
「プロ教師直伝! 授業成功のゴールデンルール」
「大前流教師道―夢をもちつづけることで教師は成長する」
「どの子も必ず体育が好きになる指導の秘訣」